CREDO4

atg0tga2006-06-01

しばらくぶりになってしまいました。

さて前回の続きで、語源の検討から。
ギリシャ語源では3つの原則があるとのことでした。
1.主人は客に対して敬う気持ちをもつこと。客が望みを口にする前に尋ねない。
2.客は主人に対して礼儀を持って接し、負担とならないように努める。
3.主人は客に食べ物・飲み物を供応し、出立に際しては客を迎えた「光栄」に謝して贈り物をする。

ここから中世の言葉の変遷に関して、いろいろな方々のWEBを拝見しました。
主に上田博人先生の文章より図などを引用いたします。

                                                                                                                                                                • -

ghosti- 「よそ者,客」という語が想定され,印欧語族の古い時代に,よそ者を客として歓待し宿泊させる習慣があったと想定されるる.それが,英語 guest 「客」の語源にあたる.一方,ラテン語では hostis 「よそ者,敵」という対照的な意味をもっていた。しかし,ラテン語の hospes (

                                                                                                                                                                          • -

英語のhostile(敵意のある)と hospitable(親切にもてなす)は各々、hostis と hospes を
語源としている。

また英語のhostage は、古フランス語の hoste(主人/客)+-age(状態)から成り立っているとのこと。hoste(oste)は〈主人〉であると同時に〈客〉も表すようです。現代フランス語の hote も同様。

「旅人・客・宿主」を意味する[hospes]で、これから分かれて生じたものに[hospitalis]があり、「手厚いもてなし」を意味する形容詞であった。[hospitalis]の中性形が[hospitale]で、この中世ラテン語が「巡礼や参拝者、旅人のための宿泊所」を意味した。
その後、[hospitale]は、現在のフランス語で[hospital]、中世・初期近代英語の[hospital]になった。

現在のhotelはフランス語のhostelから音の無いsが消えてできたものであり、
フランス語では同様にhospitalからsが消えて hôpitalとなった。

また古いフランス語ではhospitalはhôtel-Dieu, "hostel of God."とも呼ばれていた。
上記のようにhositalは僧院などに付属したり、寄付金などで独立した組織として存在し、
通常の病人だけでなく、ライ病患者、貧しいもの、巡礼者の避難所として機能していた。
そのため現在でも老人ホーム、養老院、孤児院などの意味でも使用される。

                                                                                                                                            • -

さて日本語では「病院」という言葉は、明治期以降「負傷者や病人の収容施設」という意味合いで
「Hospital」という言葉の訳語として誕生したというのが一般的に言われているそうです。
ところで「医院」という名称は「医を司る所」という意味で、その名の通り「医療を提供する施設」という意味を持ち、古くから存在していたといわれており、。漢字文化圏である中国における「Hospital」は「病院」とは言わずに「医院」といいます。
この意味で順天堂大学医学部附属順天堂医院は、明治以前の由緒をもつので「病院」という言葉を使用していないのだと思います。

ここでこの「病院」という言葉の語感に対するご意見として、
OMC No.26 May, 2004 大阪医科大学図書館報/ 大阪医科大学附属看護専門学校図書室報
牧彰(まき・あきら 建築家)氏の文章を一部引用します。

                                                                                                                            • -

文明開化の明治期に、HOSPITALの翻訳語として[病院]の二文字を当てた裡には、病院への国家的な差別意識が歴然と伺えます。そこにはECONOMYを[経済:経世済民 けいせいさいみん・世をおさめ民をすくう]としたような高遠な理想や真摯な気概が全然感じられません。

病院を意味するままに解釈すれば病の館であり、そこには本来この施設に必要不可欠なHOSPITALITY(もてなしの心)などは微塵も感じられません。病の館を英語に直訳するとSICK HOUSEであり、原語のHOSPITALとの彼我の差には唯々唖然とさせられます。

                                                                                                                                • -